※本コラムは、2026年4月9日に登壇したJapan DX Weekにおける公式カンファレンスをベースに連載しております。
今回は、前回、二つ目の課題としてあげた「部門間の連携不足」について、具体的な事例を用いて説明していきたいと思います。

部門間の連携が必要な業務改善事例
【事例1】経理の課題である「決算の早期化」を受注部門の自動化で改善
一つ目の事例は、経理部門における永遠の課題といえる「決算の早期化」について、経理部内部の自動化ではなく、他部門の改善で解決することに成功したという事例です。
この会社は、とあるグループ会社の子会社で、親会社からの依頼で連結決算のために決算の早期化を実現してほしいというものでした。
経理担当者にヒアリングした結果、もちろん、経理内部の自動化による効率化の余地もありましたが、それ以上に深刻だったのは、業務部門による「確認を終えた仕入先からの請求書」の経理部門への提出の遅れでした。
経理部門は会社の事業活動から生じる多くの取引データが最終的に集まる部門ですので、前の部門の遅れの皺寄せを受けやすいという特有の課題があります。
今回は、その典型例でした。

そこで、請求書のチェックをおこなっている受発注担当者※にヒアリングをしたところ、「日々の受発注登録に追われていて、請求書の確認に時間を割けず、いつもぎりぎりになってしまう」ということでした。
※受発注担当者:商社形態の取引を行っているため、受注と発注が同時に立つ
そうなると、受発注業務の効率化が必要になりますが、こちらの会社は、業態の特性上、特に受注業務に課題があることがわかり、まずは、受注業務における自動化を提案しました。
具体的には、下記になります。
・受注データのデジタル化
・受発注システムへの受注登録の自動化
・確認後の請求データの受発注システムへの登録
受注データのデジタル化及び自動登録は、業種の特性上、発注元のシステム利用率が低く、業務整理及び効果のある自動化範囲の選定にかなり苦戦しましたが、最終的に自動化が実現したことで、予定していた受注登録担当者の増員が不要になり、また、これまでの受注登録担当者にも余裕ができたことから、請求書の確認が遅滞なく行われるようになりました。
もちろん、決算の早期化にも貢献しました。
この事例は、顕在化している症状の根本的な原因が他の部門にあったというもので、解決のためには部門横断的な改善が必要となったものです。
おそらく、どこの会社においても似たような課題があるのではないかと思います。
【事例2】運用の改善によりワークフローの導入効果が初めて実現
二つ目の事例は、部門横断的にワークフローシステムを入れたにも関わらず、効率化が実現できなかった会社になります。
その原因は、そもそも承認フローの運用にあり、システム化以前の問題でした。

こちらの会社についても、元々の依頼は、経理部における会計業務の効率化でした。
ただ、事例1でもご説明しましたように、経理は企業の多くの取引データが最終的に集まる部門になりますので、業務可視化については全社を対象に実施しました。
その結果、経費精算※の承認フローについて、全社的な課題が見つかりました。
※この会社における「経費精算」とは、仕入れ業務も含め、すべての経費処理に関わる業務を指していました。
一般的には、支出の必要性や内容については、該当部署の上長が確認、承認を実施し、経理部門へ支払いを依頼。
経理部門では、会計処理についての承認や出金業務を実施するという形で業務分担を行います。
しかし、こちらの会社では、各業務部門における必要書類のチェックや支出内容のチェックが十分に機能しておらず、経理部門からの不足資料や支出内容の問い合わせが日常的に発生していました。
添付すべき資料の種類が多かったことで、面倒だと感じていた現場担当者が書類を一式丸ごと添付、上長は不必要な部分も含まれる添付書類の中身を詳細に確認することが手間となって、そのまま経理へ流し、経理担当者が優秀であったことや面倒見が良かったこと、また、添付処理が一式丸ごとついていたために、ある程度内容を確認することが可能だったので、この処理がなんとか機能していました。
ですが、内容の確認は、本来業務を知っている該当部署で実施することが、効率的かつ有効であることは言うまでもありません。
このような状態で、形だけで全社的なワークフローを導入しても、経理から現場への問い合わせは残ったままになりますので、効率化は進みません。
このプロセスの改善には、経営者のコミットが欠かせませんでした。
添付書類の整理や上長の業務内容の明確化といった運用の見直しを行った結果、ようやく本来のワークフローの機能が有効活用されるようになり、効率化が実現したのです。
本事例では、部門間の連携が必要ということに加え、
・システム導入の効果を最大限発揮するためには業務整理が必要
・業務改善には経営者のコミットが必要
といったことの示唆にもなっています。
いかがでしたでしょうか?

企業活動は当然ですが、各部門が連携して行われています。
二つの事例は、企業活動においてデータの終着点となる経理部門における効率化を例に挙げましたので、わかりやすかったかと思いますが、同じような問題は、他のあらゆる部門間で起こり得ますので、部門単位での対応には限界があります。
特に、デジタル化、DX推進を進めていけば行くほど、システムによる部門間のデータ連携の重要性は増し、全社最適視点の重要性は増していきます。
これは、今後AIエージェントの活用という場面においては、リスクという観点からも非常に重要な論点になり得ます。

今回のご説明で部門間の連携、全社最適の発想が重要であることをご実感いただけたかと思います。
ですが、
「頭では分かっていても、具体的にどうすればいいのかわからない」
「何から手をつければ良いかわからない」
そして、
「実際にスモールスタートで業務ごとにIT投資を始めてからいるが、それらをどう、全体最適につなげて良いのかわからない」
といった経営者様も多いかと思います。
そこで、次回は、DX推進の第一歩「業務可視化」の具体的な手法について、ご紹介したいと思います。


